ハトの話

ハトと私の出会いはいつのことだったか。

 

気付いたら近くにいるハト。

 

物心ついたころには誰もが目にしているハト。

 

皆さんは、ハトお好きでしょうか?

 

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もっちりしたハト可愛いよね

ハトも健気に頑張ってるねって話

ハトさんは人類が作り上げた石の町で健気に生きている。

 

猫に追われ、

カラスに追われ、

雀に餌を横取りされ、

子供から脅され、

それでも「ぽっぽー」と頑張っている。

 

平和の象徴とか言われるけど、ハトさんたちは常に修羅場をくぐってるよね。

一応野生動物だし。

 

そんなハトさんと私の会合は小学生の頃にさかのぼる。

 

小学生の頃の私は、近所のとある公園でよく友達と一緒に遊んでいた。

その公園は大きな木がうっそうとしていて、薄暗く、人気もあまりない公園だったが、家が近かったこともあり、たまに遊んでいたのだ。

ある日、その公園でおばさんが沢山のハトに餌をやっているところを見た。

お米をばらまいているだけだったが、数十匹のハトがこぞってやってきていた。

それを見て、子供というのはなんにせよ、餌をやるのが大好きであったため、餌付けしてさらに、芸を仕込んでみようと思い立った。

その日から毎日公園に行っていた。

コンビニで友達とお金を出し合って食パンを買い、公園にいってはハトと戯れる。

そんな日々だった。

お気に入りのハトを選び、名前を付けて、芸を覚えさせようとした。

ハトさんも最初は警戒していたが3日目から既に慣れ始め、4日目には手にパンを乗せて餌をやることができた。

一週間も経てば、腕に乗せることもできた。

芸と言っても、ハトさんにできるのは腕に乗るくらいのことだった。

ハトさんはとてもお茶目で、遠くからこちらを見つけると、飛んで来ればいいのに、とてとてっと走ってくるのだった。

水を飲む時も、鳥は喉の構造からかがんで水を口に含んだら、顔を上げないと飲めないはずなのに、顔を水たまりにつけたまま、ごくごく飲んでいた。

雀にパンを横取りされると、怒って追いかけまわしていたが、ハトさんはのろいので普通に逃げられていた。

パンを持って歩くと、列をなしてついてきて、遅れたハトさんは頑張って走っていた。

手のひらにパンを乗せると、間違えて手を噛むが甘噛みなハトさんもいれば、パンごと全力で噛んでくるハトもいた。

腕に乗せると、爪が刺さって痛かった。

 

友達とハトさんを育成するのは楽しかったが、そんなハトさんもかけがえのない友達だったのだ。

 

 

そうして一ヵ月近くたち、冬になって、流石に鳥インフルエンザが心配だとして、ハトさんたちとは遊ばなくなった。

次第に公園からも足が遠のいていった。

 

 

 

そして、一年前。

そんな幼少の思い出を忘れて久しい私の近くに、あの子は引っ越してきた。

ハトさんだ。

ハトさんは近所の家のドアの上にある箱のようなものの上に巣を作った。

その家には誰も住んでいなさそうだったが、その玄関の前の道は自分の他にも近隣の住民がよく往来するような場所だった。

私も出かける際には、その前をどうしても通らないといけないため、巣で和むハトさんとよく目が合った。

私は旧友にあったような気持ちになり、ほっこりしていたが、ハトさん的には警戒度MAXですぐに飛び去っていった。少し悲しかった。

そんなハトさんも夜は眠いのか、私が帰ってくる時間帯では近づいても逃げなかった。

疲れた私を出迎えてくれるハトさんは癒しの化身のような存在だった。

 

そんなハトさんだったが、管理人によって撤去されたのか、ある日から巣は綺麗さっぱりなくなっていた。

代わりに、ハトよけであろう、ゴム製のとげとげしたプレートを置いていた。

私はまた、少し寂しくなった。

 

 

 

しかし、数日前。

ハトさんは帰ってきた。

しかも、また同じ場所に巣を作ったのだ。

そう、ハトさんは賢かった。

プレートのとげとげの間に木の枝を編み込み、その上に巣を作っていったのだ。

巣に鎮座するハトさんの姿はとても頼もしく見えた。

周りの状況が悪いと思っても、それは捉え方次第だよ。

上手に使えば、立派な巣が作れるよ。

ハトさんは私に、社会で生きる術を言って聞かせてくれるようだった。

 

 

一年ぶりに、ハトさんとの日々がやってきた。

最初は私を見ると逃げていたが、3日も経てば逃げなくなった。

ハトは3日で慣れるらしい。

カメラを向けると逃げちゃったが、夜はやっぱり眠いのか、撮影OKだった。

ほっこりした。

 

 

 

でもまた、別れはやってきた。

巣はこれまた跡形もなく消され、代わりにとげとげが増えた。

 

 

 

ああ、ハトさんはどこに行ったのだろう。

鳥には帰巣本能があるらしいが、巣がなくなった時はどうしているのだろうか。

毎日、近くまで来ては、巣がないことを確認するのだろうか。

そう思うと、少し悲しくなる。

 

 

でも、きっと。また一年後。

ハトさんは戻ってくる。

増えたとげとげになんか負けない、最高の巣を作るために。

 

 

私もハトさんを見習って、どんな逆境に直面しても、その逆境の上に住んで落ち着いちゃうくらい図太くて、ふかふかした者になりたいと思う。

そして、もしそのままひっくり返されても、また舞い戻って、何度でも落ち着いてやるのだ。

 

ありがとう。ハトさん。

頑張るよ。